~「5mで3分」の本当の意味とは?~
安全停止は「ルール」ではなく「体を守る時間」
オープンウォーターダイバー講習では、
「水深5mで3分間、安全停止をしましょう。」
と学びます。
多くのダイバーは習慣として行っていますが、
「なぜ3分なの?」
「本当に必要なの?」
と聞かれると、答えられる人は意外と多くありません。
実は安全停止は、
体に溶け込んだ窒素を、より安全に排出するための時間なのです。
ダイビングは水面に出た瞬間には終わっていない
前回までに学んだように、
ダイビング中、体には窒素が溶け込んでいます。
浮上を始めると、
その窒素は
- 組織
- 血液
- 肺
へ、と移動し、
呼吸によって体外へ排出されます。
しかし、
水面へ到着した瞬間に、
すべての窒素が抜けるわけではありません。
実際には、
浮上中も、
水面へ出た後も、
体の中ではオフガスが続いています。
なぜ「5m」なのか?
では、
なぜ安全停止は5m前後で行うのでしょうか。
その理由は、
十分に圧力が下がり、窒素が効率よく排出される一方で、まだ急激な圧力変化を避けられる深さだからです。
もし、
30mから一気に水面まで浮上すると、
周囲圧力は大きく変化します。
その結果、
体の中では気泡ができやすくなります。
しかし、
5m付近で少し時間をかけることで、
体は窒素をより穏やかに排出できます。
なぜ「3分」なのか?
実は、
3分という時間に、
特別な魔法があるわけではありません。
安全停止は、
レジャーダイビングで一般的に行われるダイビングに対して、
効果と実用性のバランスが良い時間
として広く採用されています。
つまり、
「3分止まれば絶対安全」
ではなく、
3分間の余裕を持つことで、体への負担を軽減しよう
という考え方なのです。
安全停止は「減圧停止」とは違う
ここで混同しやすい言葉があります。
安全停止(Safety Stop)
- レジャーダイビングで推奨される停止
- ノンデコンプレッションダイビングで行う
- 行わなくても、すぐに減圧症になるという意味ではない
減圧停止(Decompression Stop)
- 体内の窒素量から計算された必須停止
- 行わなければ減圧症リスクが大きく高まる
- テクニカルダイビングでは必須
この二つは目的も意味も異なります。
しかし、
どちらも共通しているのは、
窒素を安全に排出する時間
ということです。
「今日は安全停止を長めにしよう」
これは、とても良い判断です。
例えば、
- ダイブコンピュータのNDLぎりぎりだった
- 流れが強かった
- 水温が低かった
- 少し疲れている
- ダイビング本数が多い
そんな日は、
5分、
あるいはそれ以上停止することで、
より余裕を持った浮上になります。
ダイブコンピュータが「浮上してよい」と表示していても、
体に余裕を持たせることは、
安全性を高める行動の一つです。
安全停止中は何をしていますか?
安全停止は、
ただ止まっているだけではありません。
この時間は、
ダイビングを振り返る時間でもあります。
例えば、
- 呼吸は落ち着いているか
- 中性浮力は安定しているか
- バディは大丈夫か
- 浮上場所は安全か
- ボートや船舶はいないか
こうした確認を行うことで、
最後まで安全なダイビングになります。
実は「止まること」より難しいこと
安全停止で苦労するダイバーは少なくありません。
浮いてしまう。
沈んでしまう。
ロープにつかまってしまう。
しかし、
安全停止は、
中性浮力を最も練習できる時間でもあります。
水深5mで静止できるということは、
浮力コントロールが身についている証拠です。
逆に、
安全停止が苦手なら、
まだ浮力コントロールに改善の余地があるということになります。
LOVE&BLUEが考える安全停止
私たちは、
安全停止を
「講習で教わったからやる」
ものではなく、
安全なダイビングを完成させる最後の時間
だと考えています。
慌てて浮上する必要はありません。
最後の3分間を、
呼吸を整え、
浮力を整え、
体を整え、
次のダイビングへつながる時間にしてください。
その積み重ねが、
10年後、20年後も安心してダイビングを楽しめるダイバーを育ててくれます。
次回予告
第10回「飽和潜水とは? なぜ何日も海の中で生活できるのか」
映画やニュースで見かける飽和潜水。
数百メートルの深海で何日も生活し、最後に数日かけて減圧する――。
その仕組みは、実はレジャーダイビングで学ぶ「飽和」の考え方と同じです。
次回は、飽和潜水の仕組みから減圧理論をさらに深く学んでいきます。
