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第4回 人体はどのように窒素を吸収し、排出しているのか?

~減圧理論を理解するための一番大切な仕組み~

「空気を吸う」だけで、体の中は変化している

ダイビングでは、普段と同じように呼吸をしているだけのように感じます。

しかし、水中ではその呼吸によって、私たちの体の中では陸上とはまったく違う現象が起きています。

その主役となるのが「窒素」です。

減圧症を理解するためには、まず

窒素がどのように体へ入り、どのように出ていくのか

を知ることが大切です。

実はこの仕組みは、それほど難しいものではありません。


私たちは普段から窒素を吸っています

「窒素」というと特別なガスのように思われるかもしれません。

しかし、私たちが普段呼吸している空気の約79%は窒素です。

残りの約21%が酸素で、その他はごくわずかなガスで構成されています。人体は陸上でも常に窒素を吸っており、ダイバーだけが窒素を取り込んでいるわけではありません。

つまり、

ダイバーの体にも、ダイビングをしない人の体にも、窒素は存在しています。


陸上では「出入りのバランス」が保たれている

吸い込んだ空気は肺へ入り、酸素は血液を通って全身へ運ばれます。

一方、窒素はエネルギーとして使われることはありません。

血液に溶け込み、全身を巡ったあと、再び肺へ戻り、呼吸とともに体の外へ出ていきます。

つまり陸上では、

体へ入る窒素の量と、体から出ていく窒素の量がほぼ同じ

というバランスが保たれています。


ダイビングをすると何が変わるのか

では、水中では何が違うのでしょうか。

一番大きな違いは、

圧力が高くなることです。

水深10mでは約2気圧。

20mでは約3気圧。

30mでは約4気圧になります。

圧力が高くなると、レギュレーターは周囲の圧力に合わせた空気を供給します。

つまり、同じ1回の呼吸でも、陸上より高い圧力の空気を吸っていることになります。


高い圧力は、より多くの窒素を体へ送り込む

高圧の空気を呼吸すると、

肺の中にある窒素の圧力も高くなります。

すると、

肺から血液へ、

血液から筋肉や脂肪などの組織へ、

今まで以上に多くの窒素が溶け込んでいきます。

これを

窒素の吸収(オンガス)

と呼びます。

ダイビング中は、このオンガスが常に続いています。


深く、長く潜るほど窒素は増えていく

例えば、

10mより30m。

20分より60分。

当然ですが、

深く潜るほど、長く潜るほど、体へ溶け込む窒素は増えていきます。

そのため、

ダイブコンピュータは

  • 深度
  • 潜水時間

を常に計算しています。

これは、

今、体にどれくらい窒素が溶け込んでいるのか

を予測しているのです。


浮上すると逆の流れが始まる

ダイビングを終えて浮上を始めると、

周囲の圧力は少しずつ下がります。

すると今度は、

体の中の窒素の方が高い圧力になり、

組織から血液へ、

血液から肺へ、

肺から呼吸によって体の外へ排出されていきます。

これを

窒素の排出(オフガス)

と呼びます。

ダイビングが終わったあとも、体の中ではしばらくオフガスが続いています。


問題は「排出するスピード」

ここで重要なのは、

窒素が出ていくこと自体は悪いことではない

ということです。

問題になるのは、

体が安全に排出できる以上の速さで浮上してしまうこと。

すると、

血液や組織の中で窒素が気泡となり、

減圧症を引き起こす可能性があります。

だからこそ、

  • 浮上速度
  • 安全停止
  • 減圧停止

が必要になるのです。


スポンジをイメージすると分かりやすい

体をスポンジに例えてみましょう。

水の中にスポンジを入れると、

早く水を吸収する部分と

少しずつ水が染み込んでいく部分があります。

そして、水から取り出しても、

すぐに水は全て抜けません。

時間をかけて少しずつ抜けていきます。

人体の窒素もこれとよく似ています。

早く溜まる部分と、ゆっくり溜まる部分、

早く抜ける部分と、ゆっくり抜ける部分。

だからこそ、

急いで浮上すると、体が窒素を処理しきれなくなるのです。


LOVE&BLUEが考える「呼吸」の大切さ

私たちは講習で、

「呼吸を止めない」

「ゆっくり呼吸する」

ことを何度もお伝えしています。

それは単に落ち着くためだけではありません。

呼吸は、

体から窒素を排出する唯一の出口だからです。

落ち着いた呼吸は、

中性浮力だけでなく、

安全な減圧にもつながっています。

だからこそ、

快適なダイビングは、

呼吸から始まるのです。

次回予告

第5回「飽和とは?過飽和とは何か? なぜ深く長く潜るほど危険になるのか」

「もうこれ以上、窒素は溶け込まない」という状態があることをご存じでしょうか。

次回は、減圧理論で最も重要な考え方の一つである「飽和」と「過飽和」を、解説します。