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第20回 ビュールマンモデルとGF設定を理解する

~現在のダイブコンピュータが考えている「安全マージン」とは~

ダイブコンピュータは、いくつかの減圧理論をそれぞれ使っています

ダイブコンピュータには、

  • Garmin
  • Shearwater
  • Scubapro
  • Suunto
  • Aqua Lung
  • Ratio
  • Divesoft

など、さまざまなメーカーがあります。

表示画面や機能は違っても、多くのダイブコンピュータが採用している減圧理論があります。(リクリエーショナルダイビング用のダイブコンピュータは設定が変更できるものは少ないですが、テクニカルダイビング用ダイブコンピュータには設定を変更できます。)

それが

ビュールマンモデル(Bühlmann ZH-L16)

です。

現在、世界で最も広く使われている減圧理論と言っても過言ではありません。

しかし、ビュールマンモデルを理解するためには、

まず「M値」という考え方を知る必要があります。


M値とは「ここまでは理論上安全」という限界

前回までに紹介したホルデーン理論は、

「体へ溶けた窒素を安全に排出する」

という考え方でした。

その後、

アメリカ海軍の研究者ロバート・ワークマンは、

組織ごとに

「これ以上になると危険」

という限界値を設定しました。

これが

M値(Maximum Value)

です。

簡単に言えば、

理論上、その組織が耐えられる最大の過飽和状態

を表しています。


ビュールマンは何を改良したのか

スイスの医師

アルバート・A・ビュールマン

は、

ホルデーン理論やワークマンの研究をさらに発展させました。

そして、

人体を16種類の組織(コンパートメント)に分け、

それぞれの

  • 窒素の吸収速度
  • 窒素の排出速度
  • 許容できる過飽和状態

を細かく計算するモデルを完成させました。

これが

ZH-L16

です。

現在の多くのダイブコンピュータは、

この理論をベースに減圧計算を行っています。


でも「限界まで使う」のは怖い

ここで考えてみてください。

高速道路の制限速度が100km/hだからといって、

雨の日も、

夜間も、

必ず100km/hで走るでしょうか。

ほとんどの人は、

状況に応じて速度を落とします。

ダイビングも同じです。

M値は、

あくまで

理論上の限界

です。

しかし、

実際のダイバーは、

毎回同じ体調ではありません。

だから、

限界いっぱいまで使うのではなく、

余裕を持たせようという考え方が生まれました。


Gradient Factors(GF)とは?

その「余裕」を数値化したものが、

Gradient Factors(GF)

です。

GFは、

M値を100%使うのではなく、

何%まで使うか

を設定します。

例えば、

GF80なら、

理論上の限界の80%まで。

GF90なら、

90%まで。

つまり、

GFが小さいほど、

安全マージンが大きくなります。


GF Low と GF High

現在のダイブコンピュータでは、

多くの場合、

二つの数字で設定されています。

例えば、

30/70

40/85

50/80

などです。

これには意味があります。


GF Low

最初の減圧停止付近の安全マージンです。

数字が小さいほど、

より深い位置から減圧を開始します。

つまり、

慎重な減圧になります。


GF High

最後に水面へ向かうときの安全マージンです。

数字が小さいほど、

浅い停止時間が長くなります。

つまり、

最後まで余裕を持って浮上します。


だから同じダイビングでも停止時間が違う

例えば、

二人が同じダイビングをしても、

一人は

GF30/70

もう一人は

GF50/90

だった場合、

減圧停止時間は変わります。

どちらが正しいという話ではありません。

どれだけ余裕を持ちたいか

という考え方の違いなのです。


GFを小さくすれば安全?

ここでよく聞かれる質問があります。

「GFを一番小さく設定すれば、一番安全ですか?」

答えは、

必ずしもそうではありません。

確かに、

安全マージンは大きくなります。

しかし、

減圧時間は長くなります。

すると、

  • ガス消費量
  • 水温による体力消耗
  • 長時間の減圧による疲労

など、

別のリスクも増えてきます。

つまり、

減圧とは、

リスクとリスクのバランス

なのです。


レジャーダイバーは変更した方がいい?

私たちの考えでは、

一般のレジャーダイバーは、

メーカー推奨設定で十分です。

それよりも、

優先してほしいことがあります。

  • 浮上速度を守る
  • 安全停止を行う
  • 水分補給をする
  • 無理をしない
  • ダイブコンピュータの警告を守る

GFを理解することは大切ですが、

設定だけを真似しても、

安全にはつながりません。


テクニカルダイバーがGFを考える理由

テクニカルダイビングでは、

40mを超えるダイビングや、

長時間の減圧潜水を行います。

そのため、

  • ガス計画
  • 水温
  • ダイビング時間
  • 水面状況
  • チーム構成

などを考慮して、

GFを選択します。

重要なのは、

「なぜその設定にしたのか」

を理解していることです。

設定を変更することが目的ではありません。

ダイビング全体の安全性を考えるための一つの要素なのです。


LOVE&BLUEが考えるGF

GFという言葉を聞くと、

「テクニカルダイバーだけの知識」

と思われるかもしれません。

しかし、

本質はとてもシンプルです。

「余裕を持って潜る。」

これを数字で表したものがGFです。

そして、

この考え方は、

レジャーダイバーにも同じように当てはまります。

余裕のあるガス。

余裕のあるダイブプラン。

余裕のある浮上。

余裕のある安全停止。

どれも、

数字ではなく、

安全への考え方

なのです。

ダイブコンピュータは、

その考え方を支えてくれる、とても優秀なパートナーです。

しかし、

最後に安全を決めるのは、

コンピュータではありません。

知識を持ち、

状況を判断し、

余裕を持った選択ができるダイバーです。

それが、

LOVE&BLUEが考える

「快適で安全なダイビング」

です。

次回予告

第21回「減圧コンピュータは何を計算しているのか?」

「体の中の窒素を測っている。」

そう思っている方も多いかもしれません。

しかし、ダイブコンピュータは実際には何を計算し、何を計算できないのでしょうか。

次回は、ダイブコンピュータの仕組みと限界について詳しく解説します。