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第18回 サイレントバブルとは?

~「気泡がある=減圧症」ではない理由~

ダイビング後、あなたの体にも気泡があるかもしれません

「減圧症は体の中に気泡ができる病気です。」

これはダイビング講習でも学ぶ内容です。

しかし、近年の研究によって、驚くべきことが分かりました。

ダイビング後、多くのダイバーの体内には気泡が存在しています。

それにもかかわらず、多くのダイバーは減圧症を発症しません。

この症状を伴わない気泡を

サイレントバブル(Silent Bubble:無症候性気泡)

と呼びます。

この発見は、減圧理論を大きく進化させるきっかけとなりました。


サイレントバブルはどのように発見されたのか?

昔の減圧理論では、

「気泡ができないように浮上する」

という考え方が中心でした。

ところが、超音波ドップラー装置などを使ってダイバーの体内を調べる研究が進むと、減圧症の症状がないダイバーにも、小さな気泡が存在することが確認されました。

つまり、

気泡があることと、減圧症になることは同じではなかった

のです。

この発見は、ホルデーン理論だけでは説明できない現象でした。


気泡は悪者なの?

ここで誤解しないでいただきたいことがあります。

小さな気泡があること自体が、すぐに危険というわけではありません。

私たちの体には、

  • 気泡を肺で排出する仕組み
  • 血液中で処理する仕組み
  • 気泡を小さいまま保つ働き

などが備わっています。

そのため、多くのサイレントバブルは自然に消えていきます。

問題になるのは、

気泡が大きくなったり、数が増えたりしたときです。


なぜ同じダイビングでも結果が違うの?

例えば、同じ日に、

  • 同じボート
  • 同じポイント
  • 同じ水深
  • 同じ潜水時間

で潜った二人がいたとします。

一人は何事もなく終わり、

もう一人は減圧症になることがあります。

なぜでしょうか。

その理由は、

人間は一人ひとり違うからです。

例えば、

  • 水分補給の状態
  • 疲労
  • 睡眠不足
  • 寒さ
  • 血液循環
  • 年齢
  • 体質

こうした違いが、気泡の成長や排出に影響すると考えられています。

だからこそ、

ダイブコンピュータだけでは完全に安全を保証できないのです。


サイレントバブルから生まれた新しい減圧理論

サイレントバブルの発見は、

減圧理論を大きく変えました。

それまでの理論は、

「窒素を安全に排出する」

ことが中心でした。

しかし、

サイレントバブルが見つかったことで、

新しい考え方が生まれます。

「気泡をできるだけ大きく育てないように浮上しよう。」

この考え方から、

  • 気泡モデル
  • ディープストップ
  • RGBM
  • VPM

などの理論が発展していきました。

現在でも研究は続いており、

減圧理論は進化を続けています。


サイレントバブルは見えない

サイレントバブルは、

体に違和感がありません。

痛みもありません。

自分では存在に気付くこともできません。

だからこそ、

「今日は調子がいいから大丈夫」

という考え方は危険です。

症状がないことと、

体への負担がないことは、

必ずしも同じではありません。


サイレントバブルを減らすためにできること

サイレントバブルを完全になくすことはできません。

しかし、

減らすためにできることはあります。

例えば、

  • 浮上速度を守る
  • 安全停止を丁寧に行う
  • 十分な水分補給をする
  • 呼吸を止めない
  • ダイブコンピュータの警告を守る
  • 無理なダイビング計画を立てない

どれも基本的なことですが、

これらの積み重ねが、

体内でできる気泡を最小限に抑えることにつながります。


ダイビング後も体の中では減圧が続いている

「船へ上がったから終わり。」

実はそうではありません。

ダイビング終了後も、

体の中では数時間から十数時間にわたって窒素の排出が続いています。

そのため、

ダイビング直後の激しい運動や脱水は、

サイレントバブルに影響を与える可能性があると考えられています。

ダイビング後も、

水分補給を行い、

ゆっくり体を休めることが大切です。


サイレントバブルは「見えない安全マージン」を教えてくれる

サイレントバブルの研究が私たちに教えてくれたことがあります。

それは、

ダイブコンピュータの表示だけでは、安全は判断できない

ということです。

コンピュータが計算しているのは、

あくまで理論上の窒素量です。

しかし、

実際の体の中では、

小さな気泡が生まれ、

消え、

また生まれるという複雑な現象が起きています。

だからこそ、

ダイビングでは、

「余裕」が大切なのです。


LOVE&BLUEが考えるサイレントバブル

サイレントバブルは、

私たちに一つの大切なことを教えてくれました。

「見えないから存在しない」わけではない。

体の中では、

私たちが気付かない現象が起きています。

だからこそ、

毎回のダイビングを、

ギリギリではなく、

余裕を持って終えること。

安全停止を、

「3分待つ時間」ではなく、

「体を守る時間」と考えること。

この積み重ねが、

10年後も、20年後も、

健康にダイビングを楽しむことにつながります。

減圧理論は、

難しい数式を覚えるために学ぶものではありません。

自分の体を理解し、大切にするために学ぶもの。

それが、LOVE&BLUEが皆さんへ伝えたい減圧理論です。

次回予告

第19回「気泡モデルとホルデーンモデルの違い」

現在のダイブコンピュータには、さまざまな減圧理論が使われています。

「溶けた窒素」を重視するホルデーンモデルと、「気泡」を重視する気泡モデル。

その違いを理解すると、減圧理論の進化がより深く見えてきます。