~数字の意味を知れば、安全マージンの考え方が変わる~
最近のダイブコンピュータにある「GF」って何?
最近のダイブコンピュータには、
- GF Low
- GF High
- Gradient Factors
という設定があります。
「初期設定のまま使っている。」
「何となく聞いたことはある。」
というダイバーも多いでしょう。
実はこのGFは、
ダイブコンピュータの性格を決める重要な設定です。
しかし、最初にお伝えしたいことがあります。
GFは、初心者が自由に変更するための機能ではありません。
まずは「どのような考え方なのか」を理解することが大切です。
GFを理解する前に「M値」を知ろう
第3回では、
ホルデーンの理論を紹介しました。
その後、
アメリカ海軍の研究者ワークマンは、
「ここまでなら組織は耐えられる」
という限界値を示しました。
これが
M値(Maximum Value)
です。
その後、
ビュールマンはこの考え方を改良し、
現在多くのダイブコンピュータで使われている減圧モデル(ZH-L16)へ発展させました。
つまり、
M値とは、
理論上、組織が耐えられる最大の過飽和状態
を示しています。
でも、本当に限界まで使って良いの?
ここで考えてみましょう。
高速道路の制限速度が100km/hだからといって、
雨の日でも、
夜でも、
必ず100km/hで走るでしょうか。
多くの人は、
状況に応じて速度を落とします。
ダイビングも同じです。
M値は、
理論上の限界です。
しかし、
実際には、
- 疲れている
- 寒い
- 脱水している
- 年齢
- ダイビング経験
など、
様々な条件があります。
そこで登場したのが、
Gradient Factors(GF)
です。
GFとは「安全マージン」の設定
GFとは、
簡単に言えば、
M値をどこまで使うか
を決める割合です。
例えば、
GF100なら、
理論上の限界(M値)まで使う計算になります。
一方、
GF80なら、
限界の80%までしか使わないため、
より余裕を持った減圧になります。
つまり、
GFとは、
安全マージンを数値で設定する仕組み
なのです。
GF Low と GF High の違い
ここが最も分かりにくい部分です。
GF Low
最初の減圧停止付近で、
どれだけ保守的にするかを決めます。
数字が小さいほど、
より深い位置から減圧停止を開始する傾向になります。
GF High
最後の浮上付近で、
どこまで余裕を持つかを決めます。
数字が小さいほど、
浅い停止時間が長くなり、
より保守的な浮上になります。
つまり、
GF Lowは
減圧開始の考え方
GF Highは
浮上完了までの余裕
を決める設定なのです。
なぜ機種によって設定が違うの?
メーカーによって、
初期設定は異なります。
例えば、
あるメーカーは保守的に、
別のメーカーは少し自由度を高く、
という違いがあります。
これは、
「どれが正しい」
という話ではありません。
それぞれのメーカーが、
安全性と実用性のバランスを考えて設定しています。
だから、
同じダイビングでも、
コンピュータによって停止時間が少し違うことがあります。
GFを変更すれば安全になる?
ここで注意していただきたいことがあります。
GFを保守的に変更すれば、
理論上の安全マージンは大きくなります。
しかし、
それだけで減圧症を完全に防げるわけではありません。
なぜなら、
ダイブコンピュータには、
- 脱水
- 疲労
- 寒さ
- 睡眠不足
- ストレス
などは計算できないからです。
GFは、
減圧理論上の余裕
を調整しているだけなのです。
テクニカルダイバーはGFをどう考えている?
テクニカルダイバーは、
目的に応じてGFを設定することがあります。
例えば、
- 水温
- ダイビング時間
- 水深
- ガス計画
- チーム全体の経験
などを考慮して、
最適な設定を選びます。
しかし、
重要なのは、
数字を変えることではありません。
その数字にした理由を理解していることです。
設定だけを真似しても、
安全にはつながりません。
レジャーダイバーは変更するべき?
私の考えでは、
一般のレジャーダイバーは、
まずメーカー推奨設定で十分です。
それよりも、
大切なのは、
- 浮上速度
- 安全停止
- 水分補給
- 呼吸
- 無理をしないダイビング
こうした基本を身につけることです。
GFは、
基本が身についてから、
「なぜこの設定なのか」
を理解するための知識として学ぶことをおすすめします。
LOVE&BLUEが考えるGF
GFという言葉を聞くと、
難しいテクニカルダイビングの話に聞こえるかもしれません。
しかし、
本質はとてもシンプルです。
どれだけ余裕を持って潜るか。
それを数値化したものがGFです。
LOVE&BLUEでは、
設定だけを覚えるのではなく、
その考え方を理解することを大切にしています。
ダイブコンピュータは、
安全を作ってくれる機械ではありません。
安全なダイビングをサポートしてくれる道具です。
その道具を正しく使いこなすためには、
数字の意味を理解することが、
何よりも重要なのです。
次回予告
第17回予告 ディープストップとは何か
~「深い場所で止まる方が安全」は本当なのか?~
かつては「深い場所でも停止する方が減圧症を予防できる」と考えられ、多くのダイバーがディープストップを実践していました。
しかし、減圧理論や研究が進んだ現在、その考え方は大きく見直されています。
なぜ評価が変わったのでしょうか。
そして、今のダイビングではディープストップは本当に必要なのでしょうか。第17回では、ディープストップの誕生から最新の考え方までを、減圧理論の進化とともに解説します。
