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第14回 ヘリウムとは? なぜテクニカルダイバーはヘリウムを使うのか

~「深く潜るため」ではなく、「安全に潜るため」のガス~

ヘリウムと聞くと何を思い浮かべますか?

「風船に入っているガス。」

「吸うと声が高くなるガス。」

多くの方は、そのようなイメージを持っているでしょう。

実は、このヘリウムはテクニカルダイビングでは非常に重要な呼吸ガスです。

しかし、その目的は

深く潜るためではありません。

ヘリウムを使う最大の目的は、

深い場所でも冷静な判断力を保ち、安全にダイビングを行うことです。


なぜ空気だけではダメなの?

これまでのコラムで学んだように、

空気には約79%の窒素が含まれています。

深く潜るほど、

窒素分圧は高くなり、

窒素酔いが起こりやすくなります。

さらに、

深度が深くなると、

呼吸そのものも重たく感じるようになります。

つまり、

深いダイビングでは、

  • 判断力
  • 呼吸のしやすさ

この二つが大きな課題になるのです。


ヘリウムは麻酔作用が非常に少ない

ヘリウム最大の特徴は、

麻酔作用(ナルコーシス)が非常に少ない

ことです。

そのため、

窒素の一部をヘリウムへ置き換えることで、

深い場所でも、

より冷静な判断力を維持しやすくなります。

例えば、

40mを超えるダイビングでは、

空気よりもトライミックスを使用した方が、

作業能力や判断力を保ちやすいことが知られています。

つまり、

ヘリウムは、

「深く潜るためのガス」

ではなく、

安全に考え、正しく判断するためのガスなのです。


呼吸が楽になる理由

ヘリウムには、

もう一つ大きな特徴があります。

それは、

非常に軽いガス

であることです。

ヘリウムは空気より密度が低いため、

深い場所でも呼吸抵抗が少なくなります。

例えば、

40mを超えると、

空気はかなり重く感じます。

呼吸に力が必要となり、

二酸化炭素も体内へ溜まりやすくなります。

しかし、

ヘリウムを混ぜることで、

呼吸は軽くなり、

二酸化炭素が過剰に蓄積するリスクも軽減できます。

これは、

深いダイビングでは非常に大きなメリットです。


トライミックスとは?

ヘリウムは単独では使用しません。

一般的には、

  • 酸素
  • 窒素
  • ヘリウム

この3種類を混ぜた

トライミックス(Trimix)

として使用します。

例えば、

酸素18%

ヘリウム35%

窒素47%

というように、

目的の深度に合わせて、

最適な割合を計算して使用します。


ヘリウムにも欠点がある

ここまで読むと、

「それなら全部ヘリウムで潜ればいいのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、

ヘリウムにもデメリットがあります。

例えば、

① 高価

ヘリウムは天然資源であり、

非常に高価なガスです。

そのため、

トライミックス講習やダイビング費用が高くなる理由の一つでもあります。


② 熱を奪いやすい

ヘリウムは熱伝導率が高いため、

体温を奪いやすい特徴があります。

そのため、

長時間のトライミックスダイビングでは、

保温対策が非常に重要になります。


③ 高圧神経症候群 (HPNSハイプレッシャーナーバスシンドローム)

150mを超えるダイビングで

まだあまり解明されていない神経症状が

現れることがわかっています。


ヘリウムを使う深度とは?

一般的なレジャーダイビングでは、

ヘリウムは必要ありません。

しかし、

40mを超えるダイビングでは、

判断力や呼吸の安全性を考え、

ヘリウムを使用するケースが増えてきます。

もちろん、

深度だけで決まるものではなく、

  • 作業内容
  • 潜水時間
  • 水温
  • 流れ

など、

さまざまな条件を考慮して、

使用するガスを選択します。


テクニカルダイビングの考え方

ここで、

一つ知っておいていただきたいことがあります。

テクニカルダイバーは、

「より深く潜ること」

を目標にしているわけではありません。

目標は、

どんな環境でも、安全に帰ってくること。

そのために、

  • 呼吸しやすいガス
  • 判断力を保つガス
  • 減圧を効率良く行うガス

を使い分けています。

つまり、

ガスを変えることは、

難しいことをするためではなく、

リスクを減らすためなのです。


LOVE&BLUEが考えるヘリウム

ヘリウムは、

特別なダイバーだけのガスではありません。

その考え方は、

レジャーダイバーにも役立ちます。

「限界まで我慢する。」

ではなく、

「余裕を作る。」

これがテクニカルダイビングの基本です。

余裕のある呼吸。

余裕のある判断。

余裕のあるガス計画。

その積み重ねが、

安全なダイビングにつながります。

ヘリウムは、

その「余裕」を作るための一つの道具なのです。

次回予告

第15回「ダイブコンピュータは何を計算しているのか?」

毎回当たり前のように見ているダイブコンピュータ。

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