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第12回 酸素中毒とは? 酸素は多いほど安全ではない

~命を支える酸素が、なぜ危険になるのか?~

酸素は「多いほど良い」と思っていませんか?

私たちは酸素がなければ生きていくことはできません。

そのため、

「酸素が多いほど体に良い。」

と思われる方も多いでしょう。

しかし、ダイビングではその考え方は当てはまりません。

実は、

酸素は圧力が高くなると毒性を持つことがあります。

これを

酸素中毒(Oxygen Toxicity)

といいます。

だからこそ、ナイトロックスやテクニカルダイビングでは、酸素濃度だけではなく「酸素分圧(PO₂)」を管理することが重要になります。


酸素そのものが悪いわけではない

まず理解していただきたいのは、

酸素は危険なガスではありません。

陸上では、

私たちは毎日約21%の酸素を問題なく呼吸しています。

では、

何が変わるのでしょうか。

答えは、

圧力です。

ダイビングでは深く潜るほど周囲圧力が高くなります。

つまり、

同じ32%の酸素でも、

水深が深くなるほど、

体へ取り込まれる酸素の量は増えていくのです。


大切なのは「酸素濃度」ではなく「酸素分圧」

初心者の方は、

酸素濃度だけを気にしてしまいます。

しかし、

ダイバーが管理するのは

酸素分圧(PO₂)

です。

酸素分圧とは、

酸素濃度 × 周囲圧力

によって決まります。

例えば、

空気(酸素21%)でも、

十分深い場所まで潜れば、

酸素分圧は高くなります。

一方、

EAN32は酸素濃度が高いため、

より浅い深度で同じ酸素分圧へ達します。

つまり、

酸素濃度だけでは安全性は判断できないのです。


なぜ危険なのか?

酸素分圧が高くなり過ぎると、

体内では活性酸素が過剰に発生し、

神経へ影響を及ぼすことがあります。

特に怖いのが、

中枢神経型酸素中毒(CNS Oxygen Toxicity)

です。

水中では、

前触れなく発症することもあり、

非常に危険です。


水中では何が起こるの?

中枢神経型酸素中毒では、

次のような症状が現れることがあります。

  • 視野が狭くなる
  • 耳鳴り
  • 顔の筋肉のけいれん
  • 吐き気
  • 不安感
  • めまい

そして最も危険なのが、

全身けいれん(痙攣)

です。

水中でけいれんが起これば、

レギュレーターを外してしまったり、

呼吸ができなくなったりする危険があります。

そのため、

酸素分圧の管理は、

ダイビングにおいて非常に重要なのです。


MOD(最大行動深度)がある理由

ナイトロックス講習では、

必ず

MOD(Maximum Operating Depth:最大行動深度)

を学びます。

これは、

設定した酸素分圧を超えないための最大水深です。

例えば、

EAN32なら、

一般的な設定では約33m前後がMODになります。

つまり、

それ以上深く潜ると、

酸素分圧が安全範囲を超える可能性があります。

だからこそ、

ナイトロックスでは、

「何%の酸素か」だけではなく、

「どこまで潜るか」が重要になるのです。


テクニカルダイビングではさらに厳密に管理する

テクニカルダイバーは、

目的によって酸素分圧を使い分けています。

例えば、

作業中と減圧中では、

許容する酸素分圧を変えることがあります。

これは、

減圧効率と安全性のバランスを考えているからです。

つまり、

酸素は

「多ければ良い」

でも、

「少なければ安全」

でもありません。

状況に応じて最適な酸素分圧を選択すること

が重要なのです。


酸素100%は一番安全?

「酸素100%なら最高では?」

そう思うかもしれません。

確かに、

酸素100%は減圧効率を大きく向上させます。

そのため、

テクニカルダイビングでは、

減圧ガスとして広く利用されています。

しかし、

酸素100%を深い場所で吸うことは非常に危険です。

だからこそ、

通常は水深6m付近から使用します。

ここにも、

「酸素分圧」が深く関係しています。


ダイブコンピュータの設定を間違えると…

ナイトロックスを使用するとき、

ダイブコンピュータへ酸素濃度を入力します。

もし、

実際とは違う酸素濃度を設定すると、

MODも、

減圧計算も、

すべて間違ったものになります。

そのため、

  • ガス分析
  • コンピュータ設定
  • バディチェック

は必ず自分で確認する習慣が必要です。

便利なコンピュータも、

入力が間違っていれば正しく計算できません。


LOVE&BLUEが考える酸素管理

酸素中毒という言葉を聞くと、

怖いイメージを持つかもしれません。

しかし、

正しい知識があれば、

必要以上に恐れるものではありません。

ナイトロックスも、

減圧ガスも、

CCRも、

すべて

酸素分圧を正しく管理する

という同じ考え方で成り立っています。

ダイビングは、

知識が増えるほど安全になります。

「酸素は命を支えるガス」

だからこそ、

正しく理解し、

正しく使うことが大切なのです。

次回予告

第13回「窒素酔いとは? なぜ深く潜ると判断力が鈍るのか」

「お酒を飲んだような感覚になる。」

「深いほど楽しく感じる。」

そんな経験はありませんか?

次回は、多くのダイバーが経験する可能性のある「窒素酔い」の原因と対策について解説します。