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第11回 ナイトロックスは本当に安全なのか?

~「安全なガス」ではなく、「正しく使うことでメリットを発揮するガス」~

「ナイトロックスなら減圧症にならない」は本当?

最近では、多くのダイビングショップでナイトロックス(EANx)が利用できるようになりました。

「疲れにくい。」

「減圧症になりにくい。」

「安全だから使った方がいい。」

そんな話を聞いたことがある方も多いでしょう。

しかし、このような表現だけでは誤解を招いてしまいます。

ナイトロックスは魔法のガスではありません。

正しく理解し、適切に使用することで、安全性や快適性を高めることができるガスなのです。


ナイトロックスとは?

私たちが普段使っている空気は、

  • 酸素:約21%
  • 窒素:約79%

で構成されています。

一方、ナイトロックスは、

酸素の割合を増やし、その分だけ窒素の割合を減らした呼吸ガスです。

代表的なのは、

  • EAN32(酸素32%)
  • EAN36(酸素36%)

です。

つまり、

ナイトロックスは酸素が増えたガスではなく、窒素が減ったガス

と考える方が理解しやすいでしょう。


窒素が少ないということは…

これまで学んできたように、

減圧症の原因となるのは、

体へ溶け込む窒素です。

ということは、

同じ水深、

同じ時間潜った場合、

窒素が少ないガスを吸えば、

体へ取り込む窒素も少なくなります。

つまり、

ナイトロックスは、体内へ吸収される窒素を減らせるガスなのです。

これがナイトロックス最大のメリットです。


ノンデコンプレッション時間が長くなる

体へ溶け込む窒素が少ないため、

ダイブコンピュータが計算する

ノンデコンプレッションリミット(NDL)

も長くなります。

例えば18mでは、

空気よりEAN32の方が、

より長くノンデコンプレッションダイビングを行える場合があります。

だからといって、

「長く潜れるガス」

として使うことが、

必ずしも正しいとは限りません。


LOVE&BLUEが考えるナイトロックスの使い方

ここが一番大切なポイントです。

私たちは、

ナイトロックスを

長く潜るためではなく、余裕を持って潜るため

に使うことをおすすめしています。

例えば、

空気で40分潜る計画なら、

ナイトロックスでも40分で終了します。

すると、

体内へ取り込む窒素は少なくなります。

つまり、

安全マージンが大きくなる

ということです。

これは、

テクニカルダイビングでも基本となる考え方です。

「限界まで使う」のではなく、

「余裕を作るために使う」。

これがナイトロックス本来の価値だと考えています。


ナイトロックスにも危険はある

ここまで読むと、

「ナイトロックスなら空気より安全なのでは?」

と思われるかもしれません。

しかし、

ナイトロックスには、

空気にはない注意点があります。

それが

酸素中毒です。

酸素は人間にとって必要不可欠ですが、

高い圧力で吸い過ぎると、

中枢神経へ影響を及ぼすことがあります。

そのため、

ナイトロックスには、

最大行動深度(MOD)

が設定されています。

つまり、

EAN32ならどこまでも潜れるわけではありません。

酸素濃度が高いほど、

潜れる深度は浅くなります。


必ず自分でガスを確認する

ナイトロックスを使用するとき、

最も重要なのが、

ガス分析です。

「ショップが準備したから大丈夫。」

ではなく、

自分自身で酸素濃度を測定し、

ダイブコンピュータへ正しい酸素濃度を設定します。

これは、

レジャーダイバーでも、

テクニカルダイバーでも同じです。

ガスの管理は、

自分自身の責任になります。


ナイトロックスは疲れにくい?

「ナイトロックスは疲れにくい。」

という話もよく耳にします。

実際に、

そのように感じるダイバーは少なくありません。

一方で、

科学的には、

疲労軽減について明確な結論はまだ出ていません。

しかし、

体へ取り込まれる窒素量が少なくなることは事実です。

そのため、

連日のダイビングや、

1日に複数回潜る場合には、

体への負担を軽減する選択肢の一つになるでしょう。


ナイトロックスを使うべきダイバーとは?

ナイトロックスは、

決してテクニカルダイバーだけのガスではありません。

例えば、

  • ダイビング旅行で毎日潜る方
  • 1日に3〜4ダイブする方
  • 深度15〜30m程度を楽しむ方
  • より安全マージンを確保したい方

には、

大きなメリットがあります。

もちろん、

正しい知識と講習を受けた上で使用することが前提です。


LOVE&BLUEが考えるナイトロックス

私たちは、

ナイトロックスを

「深く潜るため」でも、「長く潜るため」でもなく、「より余裕のあるダイビングをするためのガス」

と考えています。

ダイビングは、

限界に挑戦するスポーツではありません。

安全マージンを持ち、

快適に楽しみ、

笑顔で船へ戻ることが、

一番価値のあるダイビングです。

ナイトロックスは、

その余裕を作るための、

とても優れた選択肢なのです。

次回予告

第12回「酸素中毒とは? 酸素は多いほど安全ではない」

酸素は命に欠かせないガスです。

しかし、高い圧力で吸うと危険になることがあります。

なぜナイトロックスには最大深度(MOD)があるのか。

次回は、酸素分圧と酸素中毒について、レジャーダイバーにも解説します。