~「今まで大丈夫だった」から卒業しよう~
ダイビングは楽しい。でも、見えないリスクもある。
ダイビングは、水中という普段体験できない世界を楽しめる素晴らしいアクティビティです。
色鮮やかな魚たち、沈船や地形、美しいサンゴ礁。
私たちは水中で、多くの感動と出会うことができます。
しかし、その一方でダイバーの身体には、陸上では起こらない大きな変化が起きています。
その代表が「減圧」です。
減圧症という言葉は、多くのダイバーが知っています。
ですが、
「ゆっくり浮上すれば大丈夫」
「安全停止をすれば大丈夫」
「ダイブコンピュータがあるから安心」
そう考えている方も少なくありません。
もちろん、これらは安全なダイビングのために大切なことです。
しかし、本当に安全なダイバーは、「なぜそれが必要なのか」を理解しています。
減圧症は誰にでも起こる可能性があります
減圧症は、初心者だけがなるものではありません。
経験豊富なインストラクターやテクニカルダイバーでも発症することがあります。
実際には、
- 浅いダイビング
- ノンデコンプレッションダイビング
- ダイブコンピュータの指示どおりに潜ったダイビング
でも減圧症は起こることがあります。減圧理論の研究でも、どんなに慎重なダイビングでもリスクを完全にゼロにはできないことが示されています。
だからこそ大切なのは、
リスクを理解し、できる限り小さくすることです。
ダイブコンピュータは「安全を保証する機械」ではありません
最近のダイブコンピュータは非常に高性能です。
潜水時間や深度を計算し、浮上速度や安全停止を管理してくれます。
しかし、ダイブコンピュータが計算しているのは「人間の身体そのもの」ではありません。
あくまで減圧モデルという数学的な理論を使って、体内で起こっている現象を予測しているだけです。
つまり、
- 疲労
- 睡眠不足
- 水分不足
- ストレス
- 寒さ
- 年齢
- 運動量
- 体質
このような個人差までは完全には計算できません。
ダイブコンピュータは非常に優秀なパートナーですが、「絶対に安全」を保証してくれるものではないのです。
「教本どおり」で終わらないことが大切
ダイビングの教本には、安全な潜水方法が書かれています。
しかし、海は毎回同じではありません。
海況も違えば、
- 流れ
- 水温
- 透明度
- ダイバーの体調
- 器材の状態
も毎回変わります。
そのため、本当に安全なダイバーは、教本を丸暗記するのではなく、その背景にある考え方を理解しています。
「なぜ安全停止をするのか」
「なぜゆっくり浮上するのか」
「なぜ今日は無理をしない方が良いのか」
その理由を理解できれば、状況に応じた適切な判断ができるようになります。
このシリーズで学ぶこと
このコラムでは、難しい数式を覚える必要はありません。
大切なのは、
身体の中で何が起きているのかを理解することです。
このシリーズでは、
- 減圧理論の歴史
- 身体への窒素の取り込み
- 減圧症が起こる仕組み
- ナイトロックス
- ディープストップ
- 気泡モデル
- ダイブコンピュータの考え方
- GF(Gradient Factors)
- テクニカルダイビングで使われる減圧理論
まで、初心者にも分かりやすく解説していきます。
専門的な内容も登場しますが、「なるほど、だからそうするのか」と理解できるよう、できるだけ身近な例を交えながら説明します。
LOVE&BLUEが考える安全とは
私たちは、
「事故にならなかったから安全」
とは考えていません。
たまたま事故にならなかっただけかもしれません。
本当の安全とは、
知識を身につけ、状況を正しく判断し、その日に最適なダイビングを選択できることです。
減圧理論を学ぶことは、テクニカルダイバーだけのものではありません。
レジャーダイバーこそ知っておくことで、ダイビングはもっと安全に、もっと快適に、そしてもっと長く楽しめるようになります。
次回予告
第2回:「350年にわたる減圧理論の歴史」
なぜ今のダイブコンピュータが生まれたのか。
その答えは、17世紀に行われたある科学者の実験から始まります。ボイルの気泡観察から始まった減圧研究の歴史を、ご紹介します。
