高濃度酸素を扱う器材を、安全に準備・整備するために
TDI Equipment O2 Service Technician(イクイップメント O2 サービステクニシャン)は、ナイトロックスや酸素、テクニカルダイビングで使用される混合ガスに対応するため、スクーバ器材を適切に洗浄・準備・整備するための専門プログラムです。
高濃度酸素を扱う場合、
通常のスクーバ器材と同じ考え方で整備すればよいわけではありません。
油脂、汚れ、潤滑剤、Oリング、洗浄剤など、通常使用では問題にならないものでも、酸素濃度の高い環境ではリスクとなる場合があります。
このコースでは、
- 酸素の特性
- 酸素火災のリスク
- 酸素適合材料
- 汚染管理
- 酸素洗浄
- レギュレーター
- シリンダー
- バルブ
- マニホールド
- 記録管理
などについて学び、
器材を「酸素サービスに対応した状態」にするために、何を確認し、どのように作業するのか
を理解します。
このプログラムは水中で行うダイバーコースではありません。
ダイビングを支えるガス・器材関連のノンダイビングプログラムです。
こんな方におすすめ
- ダイビングショップで器材整備に携わっている
- ナイトロックスや酸素を扱うショップで働いている
- テクニカルダイビング器材の整備について学びたい
- 酸素クリーニングについて正しく理解したい
- レギュレーターを酸素サービス対応にする方法を学びたい
- シリンダーやバルブの酸素サービスについて学びたい
- ガスブレンダーとして器材についても理解を深めたい
- ナイトロックス充填設備やテクニカルダイビングの運用に携わりたい
- ダイビング器材のメンテナンスを仕事にしたい
単に「器材をきれいにする方法」を学ぶコースではありません。
なぜ酸素環境では特別な整備が必要なのか
を理解したうえで、適切な手順を身につけることを目的としています。
Oxygen Serviceとは?
スクーバダイビングでは、空気だけでなくナイトロックスや酸素、その他の混合ガスを使用することがあります。
酸素濃度が高くなると、器材に求められる条件も変わります。
高濃度酸素環境では、
- 油脂
- 炭化水素
- 不適切な潤滑剤
- 汚れ
- 金属粉
- 繊維
- その他の異物
などが、通常より大きなリスクになる可能性があります。
そのため、酸素サービスに対応する器材では、
酸素環境に適合した材料を使用し、適切な方法で汚染物質を除去する
必要があります。
これを一般的にOxygen Cleaning(酸素洗浄)やOxygen Serviceと呼びます。
「酸素洗浄」と「普通の洗浄」は違います
器材の見た目がきれいだからといって、酸素サービスに適した状態とは限りません。
目に見えない油脂や汚染物質が残っている場合もあります。
酸素サービスでは、
「見た目がきれいか」ではなく、「酸素環境で使用するために適切な状態か」
を考える必要があります。
そのため、
- 適切な分解
- 汚染の確認
- 適切な洗浄剤
- 洗浄方法
- すすぎ
- 乾燥
- 再組立
- 汚染防止
- 記録
といった一連のプロセスが重要になります。
なぜ酸素は特別なのか?
酸素そのものは燃えるガスではありません。
しかし、
燃焼を強く促進する性質
があります。
通常の空気中では問題にならない材料や汚染物質でも、高濃度酸素環境では燃焼リスクが大きくなる可能性があります。
さらに、
- 高圧
- 急速な加圧
- 摩擦
- 衝撃
- 汚染
などの条件が重なることで、リスクはさらに大きくなります。
そのため酸素を扱う器材では、
火災を起こさないために、燃料となるものをできるだけ取り除く
という考え方が重要です。
このコースで学ぶこと
TDI Equipment O2 Service Technicianでは、酸素サービスに必要となる知識と実技を学びます。
サービステクニシャンの責任
酸素サービスを行う技術者には大きな責任があります。
整備された器材を実際に使用するのは、別のダイバーやスタッフかもしれません。
そのため、
- 正しい手順で作業する
- 不明な点を推測で処理しない
- 適切な部品を使用する
- 作業内容を記録する
- 作業後の状態を確認する
といったことが重要です。
「たぶん大丈夫」で器材を戻さないこと。
これは酸素サービスだけでなく、すべての器材整備に共通する基本です。
酸素の取り扱い
酸素を安全に扱うために必要となる基礎知識を学びます。
主に、
- 酸素の性質
- 高濃度酸素環境
- 火災リスク
- 発火要因
- 汚染
- 酸素適合材料
- 安全な取り扱い
などについて学びます。
酸素はダイビングに欠かせない重要なガスですが、
取り扱いを誤れば重大な事故につながる可能性があります。
酸素適合材料
酸素サービスでは、どの材料でも使用できるわけではありません。
器材には、
- 金属
- Oリング
- シート
- ホース
- 潤滑剤
- シール材
など、さまざまな材料が使用されています。
講習では、
酸素環境で使用する器材に適した材料をどのように考えるのか
を学びます。
Oリング
スクーバ器材には多くのOリングが使用されています。
酸素サービスでは、
- 材質
- 状態
- サイズ
- 汚染
- 潤滑剤
などを確認します。
単に「新しいOリングへ交換すればよい」ということではなく、
その使用環境に適した部品かどうか
を確認することが重要です。
潤滑剤
通常の器材整備では使用できる潤滑剤でも、高濃度酸素環境では適さない場合があります。
酸素サービスでは、
酸素環境に適合した潤滑剤
を使用する必要があります。
また、適合している潤滑剤でも、必要以上に使用することが適切とは限りません。
「何を使うか」だけでなく、
どこに、どれだけ使用するのか
も重要です。
洗浄剤
酸素クリーニングでは、目的に合わせた適切な洗浄剤を使用します。
講習では、
- 油脂
- 酸化物
- 汚れ
- その他の汚染物質
を除去するために、どのような方法を使用するのかを学びます。
洗浄剤そのものが残留物にならないよう、
洗浄後のすすぎや乾燥も重要な工程
になります。
酸素クリーニング
このコースの中心となる実技の一つが、酸素クリーニングです。
器材を適切に分解し、
- 状態を確認する
- 汚染物質を確認する
- 必要な洗浄を行う
- すすぐ
- 乾燥する
- 再汚染を防ぐ
- 適切な部品で組み立てる
- 作業結果を確認する
という一連の手順を学びます。
レギュレーター
Equipment O2 Service Technicianでは、レギュレーターを高濃度酸素・ナイトロックス環境で使用するための整備について学びます。
ただし、
このTDI認定だけで、すべてのメーカー・すべてのレギュレーターを分解整備できるようになるわけではありません。
メーカーが規定するサービス資格や手順がある場合は、それに従う必要があります。
TDI Equipment O2 Service Technicianでは、
メーカーによるレギュレーター整備技術に、酸素サービスの知識を加える
という位置づけになります。
シリンダー
酸素サービスでは、スクーバシリンダー内部の状態も重要です。
- 油脂
- 錆
- 異物
- 汚れ
- 水分
などの状態を確認し、必要に応じて適切な処理を行います。
シリンダー内部の検査そのものについては、Visual Inspection Procedures(VIP)の知識も重要になります。
バルブ・マニホールド
シリンダーバルブやマニホールドも、高濃度酸素に触れる可能性のある重要な部分です。
- 分解
- 洗浄
- 部品確認
- Oリング
- 潤滑
- 再組立
などについて学びます。
汚染管理
一度酸素クリーニングした器材でも、適切に管理しなければ再び汚染される可能性があります。
例えば、
- 汚れた工具
- 作業台
- 手袋
- コンプレッサー
- ホース
- 空気
- 潤滑剤
などが汚染源になることがあります。
そのため、
「洗浄すること」だけではなく、「洗浄した状態を維持すること」
も重要です。
作業環境
酸素サービスでは、作業する場所そのものも考える必要があります。
- 作業台
- 工具
- 洗浄設備
- 乾燥環境
- 部品保管
- 再汚染防止
など、器材以外の環境管理も重要になります。
エア充填・ガス製造設備
酸素サービスを理解するためには、器材だけでなくガスがどのように作られるのかを知ることも重要です。
講習では、
- コンプレッサー
- シリンダー
- フィルトレーションシステム
- ゲージ
- 充填設備
などについて学びます。
特に、
どこから汚染が発生する可能性があるのか
という視点でシステムを考えます。
ガスブレンディングとの関係
ナイトロックスやテクニカルダイビング用ガスを製造する方法によって、器材が高濃度酸素へ曝露する可能性があります。
講習では一般的な方法として、
- 連続フロー
- メンブレン
- プレミックス
- 分圧ブレンディング
などについて学びます。
このコースはGas Blenderを養成するためのコースではありません。
しかし、
器材がどのような環境で使われるのかを理解するために、ガス製造方法についても学びます。
酸素分析
ナイトロックスや酸素を扱うシステムでは、ガス分析も重要です。
講習では、
- 酸素アナライザー
- キャリブレーション
- 分析方法
- 分析結果の確認
などについて学びます。
シリンダーの管理と記録
酸素サービスでは、
「作業した」だけで終わりではありません。
いつ、
誰が、
何を、
どのように作業したのか。
適切な記録を残すことが重要です。
記録は、
- 作業品質の確認
- トレーサビリティ
- 次回整備
- 汚染履歴
などを考えるうえでも役立ちます。
2つの認定レベル
TDI Oxygen Service Technicianには、認定範囲によって2つのレベルがあります。
TDI Equipment O2 Service Technician
ナイトロックスやその他のテクニカルダイビング用混合ガスに対応するため、
- レギュレーター
- シリンダー
- バルブ
- マニホールド
などのスクーバ器材を酸素サービス対応に整備するための認定です。
TDI Cylinder O2 Service Technician
シリンダー系統に特化した認定です。
主に、
- シリンダー
- バルブ
- マニホールド
をナイトロックスやその他のテクニカルダイビング用混合ガスに対応する状態へ整備するための知識と技術を学びます。
レギュレーター整備はこの認定範囲には含まれません。
参加条件
TDI Equipment O2 Service Technicianを受講するための基本的な条件は次のとおりです。
- 18歳以上
- TDI Nitrox Gas Blenderまたは同等資格
- 認められたダイビング教育機関のVisual Inspection Procedures(VIP)資格
- 認められたメーカーによるレギュレーターサービス資格
- 認められたスクーバ関連施設、メーカー、ディストリビューター等での雇用、またはそのような業務に就く予定であることを示すこと
VIPについては、このコースと組み合わせて受講することもできます。
また、Cylinder O2 Service Technicianのみを受講する場合は、レギュレーターサービス資格は必要ありません。
受講条件について不明な場合は、現在保有している資格や業務内容をお知らせください。
Visual Inspection Proceduresとのセット受講
O2 Service Technicianでは、シリンダーやバルブを扱います。
そのため、シリンダー内部を適切に確認するためのVisual Inspection Procedures(VIP)の知識も重要になります。
TDIでは、VIP資格をこのコースと組み合わせて取得することができます。
これからシリンダーの検査・酸素サービスの両方を学びたい方は、セットでの受講についてもご相談ください。
[SDI/TDI Visual Inspection Proceduresを見る]
実技について
このコースでは、学科だけではなく実際の器材を使用した実技を行います。
Equipment O2 Service Technicianでは、
ナイトロックス使用に対応するため、実際にレギュレーターを整備する
ことが認定要件の一つです。
また、認定レベルに応じてシリンダーバルブなどのサービス作業も行います。
単に作業手順を見学するのではなく、
自分自身で適切な手順を実施できること
を目指します。
講習料金
TDI Equipment O2 Service Technician
講習申込料 88,000円
別途、教材代が必要です。
使用する器材、交換部品、洗浄剤などによって、別途実費が必要となる場合があります。
詳しい講習内容・料金についてはお問い合わせください。
認定について
講習を受講すれば自動的に認定されるものではありません。
TDI Equipment O2 Service Technicianとして必要となる知識と技術を理解し、認定基準を満たす必要があります。
主な認定要件として、
- 酸素サービスに必要な知識を理解する
- 適切な酸素クリーニング手順を実施する
- ナイトロックス使用に対応するためのレギュレーター整備を適切に行う
- 認定レベルに応じてシリンダーバルブを適切に整備する
- 酸素適合材料を理解する
- 汚染管理を適切に行う
- 学科試験で80%以上を取得する
- 間違えた問題についてインストラクターによる100%の復習・修正を行う
などがあります。
重要なのは、
「手順どおり洗った」ことではなく、「なぜその手順が必要なのかを理解していること」
です。
認定後にできること
認定後は、取得した認定レベルの範囲内で、ナイトロックスやその他のテクニカルダイビング用混合ガスに対応するスクーバ器材を準備・整備するための知識と技術を活用できます。
ただし、
TDIのO2 Service Technician認定だけで、メーカーが定めるレギュレーターサービス資格に代わるものではありません。
メーカーによってサービス資格・部品供給・作業手順などが定められている場合は、それらに従う必要があります。
また、日本国内で業務として行う場合は、関係する法令やメーカー規定、施設の運用基準などを確認する必要があります。
Gas Blenderとの関係
O2 Service TechnicianとGas Blenderは、どちらも高濃度酸素を扱いますが、役割は異なります。
TDI Nitrox Gas Blender
ナイトロックスなどの呼吸ガスを製造するための知識と技術を学びます。
TDI Equipment O2 Service Technician
高濃度酸素やナイトロックスに接するスクーバ器材を適切に準備・整備するための知識と技術を学びます。
つまり、
「ガスを作る技術」と「そのガスを扱う器材を準備する技術」
という違いがあります。
両方を理解することで、ナイトロックスやテクニカルダイビング用ガスを扱うシステム全体への理解が深まります。
ダイビングを支える「水面側」の技術
テクニカルダイビングというと、水中のダイバーに注目しがちです。
しかし実際のダイビングは、
- ガスを作る人
- シリンダーを検査する人
- 器材を整備する人
- 充填設備を管理する人
- ダイバー
など、多くの技術によって支えられています。
どれだけ高いダイビングスキルを持っていても、
呼吸するガスや使用する器材に問題があれば、安全なダイビングは成立しません。
O2 Service Technicianは、水中で潜るためのコースではありません。
しかし、
安全なダイビングを水面側から支える重要な技術
を学ぶプログラムです。
次のステップへ
酸素サービスについて理解した後は、目的に応じて関連する専門プログラムへ進むことができます。
ガスブレンディングを学ぶ
TDI Nitrox Gas Blender
ナイトロックスを製造するための知識と技術を学びます。
ヘリウムを含むガスを学ぶ
TDI Advanced Gas Blender
Trimixなど、ヘリウムを含む高度な混合ガスの製造について学びます。
シリンダー検査を学ぶ
SDI/TDI Visual Inspection Procedures
スクーバシリンダーの内部・外部検査について学びます。
[SDI/TDI Visual Inspection Proceduresを見る]
TDI Equipment O2 Service Technicianについてお問い合わせ
「酸素クリーニングを学びたい」
「ダイビングショップで器材整備を担当している」
「レギュレーターサービス資格を持っているのでO2サービスも学びたい」
「Gas Blenderと合わせて受講したい」
「VIPと一緒に受講したい」
「Cylinder O2 Service Technicianだけ受講したい」
など、現在の資格や目的によって受講方法が変わります。
現在保有している資格、業務内容、これから行いたい作業についてお知らせください。
目的に合わせたO2 Service Technicianプログラムをご案内します。